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本ウェブサイトは、ソーシャルマーケティングに関する正しい情報提供を目的に、
国際ソーシャルマーケティング協会、同志社大学ソーシャルマーケティング研究センターの監修により作成された
「ソーシャルマーケティングに関する公式サイト」です。
ソーシャルマーケティングとは
マーケティングの概念と様々な手法を
結びつけることにより、
「ソーシャルグッド」の実現に向け、
個人やコミュニティー全体としての
行動の変容を促すことを目指すもの。
※世界的に合意された英語の定義を、ソーシャルマーケティング研究センターが日本語訳したものです。「ソーシャルグッド」については、Q&Aをご参照ください。
マーケティングの基本概念とは「交換(exchange)」です。私たちが日頃マーケティングと呼んでいる「コマーシャル(商業的)マーケティング」の場合、人々は、金銭と交換にモノやサービスを得るという行動(購買行動)をとっています。なぜ、購買するのでしょうか。モノやサービスにより得られる価値の方が、支払う対価(失うもの)より高くて魅力的と感じるからです(A-1)。
この交換が金銭ではないコトと交換できるようになり、マーケティングの適用範囲が拡大しました。たとえば、魅力的な政策に投票する(政策と投票行動との交換)、疾患への罹患を予防するためにワクチン接種を受ける(疾病予防とワクチン接種行動との交換)などです。この行動が、個人をとりまく家族やコミュニティ、社会、さらに動物、環境や地球全体に対して思いやりある行動の場合、その行動を促すアプローチが「ソーシャルマーケティング」です。身近な例では、ごみの分別、感染予防のための手洗い、健康保持のための定期的な運動を促すアプローチ方法が挙げられます(A-2)。
でも、頭では大切なこととわかっていても、新たな行動を起こしたり、今までの行動を変えることはなかなかできません。なぜなら、新たな行動が煩わしかったり、不安だったりして、それらを超える価値を十分に感じていないからです。
では、新たな行動から得られる価値とは何でしょうか。価値は人によって異なります。たとえば、エコバッグを使うことに対して、地球の環境を守ると感じることであったり、とっさに荷物が増える時に便利と感じることであったり、エコバッグで個性を表現できることかもしれません。一方で、家のゴミ袋に使えない、持ち歩くのが面倒と思っている人にとっては、それらの不便さを超える価値を感じられなければ行動にうつせません(A-3)。
したがって、信念や態度、行動パターンが似ているグループを特定して(segmentation)、どのグループを対象とするかを明確にし(targeting)、対象者に焦点を当て(customer orientation)、行動できない理由や不安、行動動機をしっかりと調査することが重要です。調査から得られたインサイト(insight)を踏まえ、対象者とともに施策のデザインなどを進めていきます(customer orientation)。施策を多面的に策定する(marketing mix)際に、社会心理学、健康行動科学、行動経済学などの多様な分野の行動科学理論(theory)を組み合わせることで、対象者にあった価値を創造し、提供することが、行動変容の実効性を高めます。前出の定義の「様々な手法」とはこれらのことを指します。(A-4)。
(詳しくは『行動科学でより良い社会をつくる』P.30-36)
私たちが日頃「マーケティング」と呼んでいるのはコマーシャル(商業的)マーケティングです。コマーシャルマーケティングは、最大の利益に結びつくであろう人々を対象として、自社商品、例えばハンドソープを好き・ほしいと思ってもらい、お金を払ってその商品を買うこと(購買行動)を促します。その結果、商品が売れます。
一方、ソーシャルマーケティングの対象者は、問題に直面している人々やその周辺の人々です。例えば、彼らが、感染予防のための手洗いを、嫌がらず自発的に行うように促します。その結果、手洗い行動が増え、社会全体の感染まん延予防につながります(B-1)。
このように、ターゲット、促進する行動、目的がコマーシャルマーケティングとは異なります。ソーシャルマーケティングの難しさは、対象者が行動の結果をすぐに実感できないこと、そして測定指標の設定です。一商品に対する一購入のように明確な指標は特定できません。一人ひとりの行動の積み重ねが最終的には社会的インパクトにつながりますが、成果が表れるには時間がかかり、複数の要因の何が影響したのかを識別することも困難です。測定指標については今後の課題でもあります。
(詳しくは『行動科学でより良い社会をつくる』P.27-28)
ソーシャルマーケティングは、対象とする行動と行動変容を促す人々のグループを慎重に選択し(目標・対象設定)、その行動に対する障壁と価値を特定し(影響因子の調査)、それらに対処するための具体的施策を開発して(介入方法策定)実装し、その効果を測定、分析・評価をする体系的かつ計画的なプロセスです(C-1)。
重要なことは、立案者の目線で考えるのではなく、行動を促される人の立場にたって考えることです。行動を変える障壁となっているのは何か、行動を変える動機は何か、行動を変えたらどんなよいことが本人にもたらされるのか、について理解したうえで介入施策を定めることです。立案の手法は複数存在し、Lee and Kotlerモデル、STELaモデルが代表的です。
(詳しくは『行動科学でより良い社会をつくる』P.43-63)
(詳しくは『行動科学でより良い社会をつくる』P.30-36)